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Nov, 2009
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流線型への思い

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小田急3000形SE車
(写真提供:なめくじ会
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GM社 エアロトレイン
www.trainweb.com

自分にとって流線型というのは常に憧れの的だったわけでして、それは私の生まれた昭和32年に鉄道界で何があったかというと、小田急のSE車が走り出したという事実が既にその背景を象徴的に物語っているのです。 この流線型先頭形状で連接台車を採用した軽量車体のロマンスカーは、当時の国鉄鉄道技術研究所の協力も得て開発された革新的車両で、東海道本線上の走行試験で145km/hの速度記録を残しました。 また同年、国鉄では近代型通勤電車の始祖となったモハ90(後の101系)が開発され、これとSE車の技術が活かされて、翌年には国内初の長距離電車特急151系「こだま」が東京~大阪間を走り始めます。

このこだま型のボンネットデザインは、アメリカのGM社が開発したエアロトレインに影響されたという事が良く言われています。 当時の子供向け乗物絵本にも、こだま号と並んで海外のこの流線型列車が良く紹介されていたような気がします。 一方でヨーロッパに目を転じると、国際特急列車ネットワークとして Trans Europ Express(TEE)が走り始めたのもこの年です。 西ドイツ(DB)ではこれぞ流線型というデザインのVT11.5型、フランス(SNCF)ではX2700型気動車が運行に就いています。

…お分かりですよね。 つまり私が物心ついて「デンシャ~」とか言い始めた頃には、身の回りは流線型一色の世界だったわけなのです。 その後時代を経て「流線型」という古めかしい言葉はあまり使われなくなりましたが、東京オリンピックの年に開通した新幹線や、昨今の私鉄各社の優良特急などにもそのデザイン要素は脈々と受け継がれているかと思います。 特にN700系など最近の新幹線は、そのスピードと騒音対策両立のためギリギリにまでシェイプアップされた先頭形状に、何だかとてつもない機能美を感じてクラクラと来ます。

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DB VT11.5
Wikimedia Commons
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DR VT175
www.zelpage.cz

そんな私の秘めたる流線型魂をくすぐる広告が、かつてありました。 黄昏時のホームに身を置く流線型の気動車? 夕日に照らされたそれは架空なのか実在するのか良く分からない程に美しい光景で、どこか外国の特急列車のようでした。 最近になって、雑誌等に良く出ていたそのタバコ広告の事を思い出し、「キャ」で始まるタバコはキャビンのものだったかな? で、あの流線型車両は確か西ドイツのVT11.5?… ってな具合で連想して検索したのですが全然出て来ない。 結局、某サイトでそのタバコはキャビンでなくキャスター、列車の方もVT11.5ではなく旧東ドイツのVT175だと知ったのです。

我が社にもこんなノスタルジア溢れるイメージの特急車両が欲しい、そういう気持ちが強まって今回の構想を始めましたが、検討にあたりもう一つイメージした存在があるのです。 それは「千と千尋」の世界に出て来た列車、そう、青空を映す水面の上を音も無くどこまでも滑るように走って行くあの車両です。 外観はちょっとアメリカのエレクトロライナーっぽく見えますが、映画のは架線が無いから気動車かな? いや、そんな動力の問題を云々言うような世界じゃないですね…。 特に夕焼けに照らされたシーンがことさら美しく感じられたのは、先のタバコの広告と同様、私が夕日と列車の組み合わせに弱いせいかも知れません。

そんなきっかけで考え始めた当社の新車両、いや旧車両。 設定として当初はイタリアの「セッテベッロ」、又それに続く名鉄や小田急ロマンスカー等のような運転室を2階に上げた前面展望車を考えていたのですが、さすがに弱小私鉄としてそこまで大掛かりなのはどうなんだという思いで迷っていました。 長野電鉄のように、実現には至らなかったものの(小田急 HiSEの転用で実現したという見方も出来ますが)計画があった例もありますので、まぁ作ってしまっても良いのですが…。 そんなモヤモヤしていた私の気持ちに「これだ!」と踏ん切りを付けてくれたのが、たまたまネットで見付けた古い米国の「ポピュラーサイエンス」誌に掲載されていた弾丸列車をイメージした絵。 ちょっとレトロっぽくもあり少々未来的なイラストが私の琴線に引っかかり、それですっかり気に入ったこのデザインを基に、当社の流線型特急電車を創造して行く事に決めました。

そんなこんなで、色々と考えた割にこの後は若干出たとこ勝負な面もありますが、次回から制作記を連載して行きたいと思います。 目指すは昨今の電車のようにクールでもスマートでもなく、郷愁を誘う愛すべきデザインの、でもちょっと無骨で時代遅れな流線型特急車… といったところです。 予めお断りしておきますが、そんな精密な作り込みはしておりません。 ただ、それなりに思いの詰まった箱には仕上げて行きたいと思いますので、その辺の雰囲気を感じ取っていただけると嬉しいです。 制作の方は既に進んでいますので後追い記事の形になりますが、順次公開して行きます。