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パイク探訪記 第三話

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その後何年かの間、私はここを訪れる機会を持ちませんでした。意識して避けていたわけではないのですが、勤務地が変わってしまい、通勤経路から外れたのが大きな理由かも知れません。仕事の方も忙しく、とても趣味などにかまけている暇がなかったというのもあります。

いや... それは表向きに取り繕った言い訳...。人づてに聞いた話ですが、貨物線の運行はその後完全に休止となり、あの小さな機関車も耐用年数を過ぎて引込み線の奥に無残な姿をさらしているそうです。それを思うと心が痛み、見に行く勇気がなかっただけの話なのです。

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そんなある日、残業で遅くなった会社からの帰り道。駆け上がったホームで電車に逃げられた私は、時間つぶしに売店で夕刊を買いました。ベンチに腰掛けヤレヤレと広げて読み出すと、社会面の小さな囲み記事が目に留まったのです。

『下町の鉄路が復活!東葛貨物線』

「えっ」と思わず声が出そうになりましたが、そう、紛れも無くあの線路の事です。貨物列車が走らなくなって久しい筈なのに、また運行が再開されるとでも言うのだろうか。機関車も動かない筈だし、いったいどういう事...? 読み進むと記事はこう続いていました。

『下総快速鉄道東葛支線(通称:東葛貨物線、約三キロ)を路面電車化して地域密着の足とし、運行を行なう為の工事がほぼ終了し、週明けより運転を開始する。またそれに先立ち、五月九日(日)朝より沿線住民を招待して開通式及び記念列車の運転が行なわれる予定。
 同線は長らく休止状態だったが、これを地域活性化の起爆剤として活用しようとの県,市及び地域住民によるNPO団体「東葛線の未来を考える会」の意見を受け、経営を第三セクターの新会社「東葛ライトレール株式会社」に移して新たに旅客営業を開始するものである。なお愛称名は、地元に多い鳥に因んで“はとぽっぽ線”とされる。』
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最後のくだりには思わず「プッ」と吹き出し、おいおいそんなのどこにでもいるだろうと突っ込みを入れたくなってしまいましたが、何れにせよこれは大ニュース! とりあえず家に帰って早速ネットで情報を仕入れます。

ところが 「東葛貨物線」で検索 してみても、出て来るのはどれも似たり寄ったりの廃線モノばかり。でもかろうじて引っかかった新聞社の過去記事によって、どうも今はやりの超低床電車を新調して走らせるらしい事だけはわかりました。これは行って見るしかないだろうというわけで、次の日曜日を楽しみに待つ事にしました。



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