相模線:西寒川支線 (Part-2)

 線路が尽き公園の出口に差し掛かると、そこには車輪が一つ置かれていた。入口側にもあったが、こちらのはご丁寧に両軸端に軸箱までぶら下げている。
 公園を出て見通しの悪い街道を横断歩道で渡ると、すぐ先にこんもりとした林が見えて来る。案内板には八角広場と書かれており、ここでこの緑道は終っていた。

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7. 軸箱付きの車輪
(JR寒川駅方向を振り返る)
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8. この先が終点、八角広場


 ここが駅跡らしいが、とてもそんな雰囲気には見えない。名前を象徴する様に八角形の噴水が設けられているその奥には、短いレールが敷かれており、何故かその上にトロッコ状の遊具が乗せられていた。
 若い母親のグループが小さな幼児と一緒にこの箱に収まっており、何やら楽しげに会話をしている。そのかたわらにはこの広場の由来を記した碑が「旧国鉄西寒川駅跡」である事を示して立っていた。

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9. 「旧国鉄西寒川駅
相模海軍工廠跡」の石碑
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10. 木漏れ日の八角広場


 ほんとに小さな、そして周囲に何もない駅跡だ。現役の頃の西寒川駅の様子を 堀淳一氏 は以下のように記しているが、これだけでもいかに長閑とした駅だったかを伺い知る事が出来よう。

『降りようとしたがホームがない。車掌があわてて、前の方から降りてください、とどなった。一つ前の車からホームへ降りると、改札口にブリキの板屋根をかぶせただけの、壁のない物置のような、異様な小屋が見えたが、駅舎らしいものはどこにも見当たらず、ホームの北端あたりから二、三戸の普通の住宅がレールを背にして建ち並んでいるばかりだった。』
堀 淳一著:地図から旅へ(講談社)より引用
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11. これは謎の人車か!?
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12. 相模川の流れ

 かつてはこの先にも砂利採取のための貨物線が伸びていたらしいが、現在は工場街となっており、その面影はかけらも感じられない。若干それらしい形跡が見える場所もあったが、それが線路跡なのか単なる空地なのかは判然としなかった。

 民家の庭先の様な所をすり抜けて土手に上がると、思いの外開けた風景が展開した。緑の中に横たわる相模の流れ、彼方には美しい曲線の斜張橋が微かに見える。そして頬を打つ風は、僅かに潮の香りを孕んでいるようにも感じられた。


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