南海 加太線

折り返しの電車で貝塚まで戻り、再び南海に乗って駒を先へと進める事にする。 本日これまで4本の会社線をターゲットとして射止めて来たが、当初の計画に対してはまだ道半ばといった所なのである。 次の急行は空港行きだったので、泉佐野で同じホームに待っていた和歌山市行きの普通電車へと乗り継いだ。 泉佐野を発車すると空港線を分け、鳥取ノ荘駅あたりからは海岸近くを走るようになる。 みさき公園駅では海へ行くらしき母子連れが降りていったが、そういえばここから多奈川線も港の方へ分岐しているのだな。

そこからは和歌山県に向けて勾配を登り、ちょっとした山越えの区間に入る。 県境のピークを長いトンネルで抜けると和歌山大学前駅、さらに下り坂でカーブを繰り返しつつ短いトンネルをいくつか潜ると紀の川駅へ降りて来る。 河口近く大河となった紀の川を恐ろしげな古い鉄橋で渡り、右にカーブすればもうそこは終着の和歌山市駅。 クネクネと複雑なポイントを連続して渡り、列車はホームへと静かに滑り込んだ。

photo 歴史を積み重ねた和歌山市駅、ホーム上屋も年季が入っている。

電車を降りるとさすがに夏のお昼時だ、むっとして纏わり付く空気がなかなかに暑い。 階段を登り跨線橋から見渡すと、ここは本当に私鉄の駅なんだろうかと疑いたくなる位、国鉄然とした広い構内なのである。 改札を抜けて建物外のエスカレーターで1階へ降り、駅前広場からいま出て来た方向を振り返る。 で、でかい!駅ビルが、である。 ここから見上げると建物全体が何だか聳え立っている様な偉容だ。

しばらくポカンと見上げていたが、我に返って再び駅ビル内に入る。 とりあえずお土産でもと、しばし1階の名店街をうろつき、その後は2階の一角に昭和風味のレストランを見つけて懐かしきカレーライスを食べた。 注文する時にうっかり飲み物を「アイスコーヒー」と所望してしまったが、関西では今も正しくは「冷コー」なのだろうか。

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さて次に乗るのは南海の加太(かだ)線。 実は最初の計画時点でこの線は含まれておらず、次のターゲットは和歌山港線だった。 だがしかし、時刻表を調べてみると次の和歌山港行きまでにだいぶ時間があり、その間に昼飯を食って、さらに加太線を終点まで往復して来ても充分余裕なのである。 それだけ和歌山港線の本数が少ない所以なのだが、この機会を逃したら加太線も乗る事がないだろうと思い、行ってみる事にした。

加太線の電車はホームの片隅から発車するワンマンの2両編成だ。 今朝ほど乗車した汐見橋線の車両と外観は似ているが、高野線仕様じゃないのでズームカーとは言わないのかな?  時間が来て動き出すと先ほど通って来た紀の川を渡る。 加太線は以前は紀の川を本線とは別の橋梁でショートカットするように渡っていたのだが、ジェーン台風で破損しその後廃止されてしまったそうだ。 その旧橋梁は廃鉄物件として有名で、今も歩行者や軽車両等が通れる橋として橋脚が傾きながらも利用されている。

紀ノ川駅で本線から分岐して、加太線に入る。 家々の屋根の向こうに時おり紀伊水道を望みながら走ること20数分、終点の加太駅に到着した。 そこは道路と低山に挟まれた細長い敷地だが、一応終着駅らしく変速なホームが2面ある。 加太は徳島方面への船着場として栄えた港町だが、今は紀ノ川対岸の和歌山港の方からフェリーが出ている。 結構な人数が降りたが釣りや海水浴客らしく、それぞれ海の方へと三々五々歩いて行った。

位置関係は異なるが、駅や駅前の風情にどことなく先年訪れた伊予鉄高浜線の終点、高浜駅が想起される。 あちらは松山市駅、こちらは和歌山市駅を発着する点も何となく似ている。 そして双方ともに終点が港町という所も共通している。 そんなことを思いながらしばらく駅前をたむろし、和歌山市駅へ戻る電車に乗ってこの町を後にした。 次はいよいよ和歌山港線だ。

photo 加太駅ホームで発車を待つ和歌山市駅行き。ワンマン化改造された7100系の2両編成。

南海 和歌山港線

と、張り切っていたのはいいのだが、何故か和歌山市駅に到着した途端、勢い余って改札口を出てしまった。 そのまま和歌山港線へ乗り継げば良かったのに Suicaで再び入り直したから、少し乗車料金をロスした筈である。 跨線橋を降り、発車を待っている和歌山港行き電車の車内に入る。 乗客は一人、二人… やっぱりここを乗る人は極端に少ないようである。 発車するとゆっくり和歌山市駅の構内を進み、紀の川に寄り添うように流れる運河のような川を渡ること二度三度。 次がもう終点なのだが、距離の割に施設の維持費が嵩みそうな区間ではある。

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右手に紀の川が海に注ぐ河口を望みつつ、グイッと左カーブを曲がるともう終着の和歌山港駅。 港の片隅のもっと鄙びた駅を想像していたのだが、そこはフェリーターミナルへ直結するデッキのある意外と近代的な場所だった。 途中駅が無いので乗ったのと同じ人数が降り、うち私ともう1名は同類のようであるからして、用があって利用した本当の乗客は1名のみという事になる。

その人はフェリー乗り場の方へ歩いて行き、残った2名は一旦改札を入り直した上で折り返し和歌山市行きの発車を待つ。 この先に水軒駅までの廃線跡があるが、今日はそこまで探検している余裕がない。 やたらホームが長いのは、こんな駅でも日に何本か特急サザンの着発があるからだ。 座席指定車も付いているらしいが、それだけの需要があるのかどうか、この日は目にする機会がなかったので私には分からない。 和歌山港線の電車は僅か2名の客を乗せ、ゴトゴトと走って和歌山市駅へ戻って来た。

photo 和歌山港駅2番線のホーム終端部。かつて1番線側はこの先の水軒駅まで線路が伸びていた。

今度は改札口を出るのが正しい。だって次はJRに乗るんだから。 この駅は紀勢本線の終点でもあり、南海ホームの一部を間借りする形でJRが乗り入れているのだ。 では、18きっぷを出してと、あれ?そう言えば今日はこれからJR初乗りだから、日付のスタンプを入れてもらわなければならないな。 そう思って有人改札で尋ねると、駅員さん:「うちらが押していいんですかね?」、私:「あー、JRじゃないですもんね。どうしたらいいんだろ。」、駅員さん「後で押してもらう事にして、そのままお通り下さい。」という事で一件落着と相成った。

しかしながら、紀勢本線の出るホームへ降りて行くとそこにも中間改札があり、自動改札機が冷たい顔をして並んでいたので一瞬ギョッとする。 でもよく見ると、ちゃんと脇も通り抜けられるようになっていたのでホッとした。 しばらく待っていると105系だろうか、2両編成の味気ない通勤車が到着、これが乗客を降ろすと和歌山駅行きとなる。 地方の都市にJRと私鉄の2大駅が離れて存在するというのはよくある話だが、ここもその例で2駅間をシャトル電車が繋いでいるのだ。 つまり紀勢本線は実質和歌山駅が終点で、和歌山~和歌山市駅の区間は支線扱いのような運行形態なわけである。

座席はほぼ埋まるほどで乗車率は高い。 この区間はこれまで未乗なので、発車すると車窓に注目しつつドア脇に陣取っていた。 電車はしばらく単線の高架で市街地の上を進み、その高架上に停留所のような小さな中間駅が一つ。 そこを過ぎて地上へと降りて来るともう終点の和歌山駅だ。 跨線橋を渡って有人改札を出る時に18きっぷを出して「日付をお願いしまーす」と言うと、若い女性職員が「はぁい」と元気な返事と共に無償の笑顔でスタンプを押してくれた。