奈良市内

明けて近鉄フリーパス2日目、本日も相変わらず奈良県内の路線を中心にウロウロと乗り回す。 しかし、東京へ戻る関係で活動時間は15時までとせざるを得ないのが残念だ。 昨夜早足で若草山焼き見物へ向かったJR奈良駅前から続く三条通、店の並ぶ夜の雰囲気が良かったが朝のまだ誰もいない新鮮な感じもまた魅力的。 宿を出たのが予定より少し早かったからどこか寄り道して市内見物でも出来るかなと考えるうち、昨夕の奈良線車窓からチラと見えた平城宮跡の雅な景色を思い出した。

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三条通
朝日を浴びつつ近鉄奈良駅へ向かう

近鉄奈良から電車に乗り、2つ目の大和西大寺駅で降りて平城宮跡へと向かう。 川沿いの小径を行き、住宅地の路地を抜け大通りを渡ると程なく史跡の入口、入って行くと目の前が突然開けて広大な草地が広がった。 左手には復元された大極殿の威容が大きく構え、右手遠くにも朱雀門が霞んで見える。 平成の世とは思えないなかなかの光景で、往時の賑わいを偲びつつ、頭の中で朱雀大路の佇まいなど想像たくましくしてみた。 しばし夢想に浸っているうち、彼方から風に乗って踏切の警報音が流れて来る。 右手を見ると朱雀門の手前を横ぎり、近鉄特急が朝の空気に走行音を残して軽やかに駆け抜けて行った。

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平城宮跡
復元された大極殿の威容

近鉄奈良線, 生駒線

もう少しゆっくりしていたいものの、残念ながら次に乗るべき電車の時刻が迫っている。 急いで駅に戻ったが、大和西大寺とくれば線路に萌える人種の間では有名なジャンクション、乗る前にしっかりカメラに収めておいたのは言うまでもない。 休日朝の大阪へ向かう客で満員の電車で西へ移動し、昨日に続いて再び生駒駅で下車。 今日はケーブルではなく、ここから生駒線に乗車するのだ。 通路を渡って一番端っこのホームに行くと、4両編成の電車が静かに発車を待っていた。 先頭車のロングシートに腰掛けるが、開け放たれた4ドアのそれぞれから外の風が容赦なく吹き込み、背筋がゾクゾクする。

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生駒駅
生駒線ワンマンカーは6番線から発車

発車するとすぐに奈良線の線路を左に見て、電車は南に向きを変えてスピードを上げる。 右手の空には昨日登った生駒の山稜が、青空の下に朝日を浴びて聳え立っている。 線路は最初のうち複線だったが、途中で単線になったり又複線に戻ったりを繰り返した。 駅ごとにドアが開放されるためか、車内は一向に温まって来ない。 そのうち、とある駅からワンマンの運転室に制服の職員が添乗して来た。 彼は運転士と何事か会話を交わしたのち、電車が動き出すと客室に入って来て我々にこう告げたのだ。 「すんません、この電車1両目だけ暖房が故障してますねん。後ろの車両はイケてますんで、宜しければそちらへお移り下さい。ご迷惑をおかけします。」

放送を使わずに、肉声で客それぞれに直接案内してまわる所がなかなか丁寧である。 故障が1両目だけなのでそうしたのだろうが、これを聞いて文句を言う人も席を移る人も、見たところ誰もいなかった。 終点までわずか数十分、実際の話わざわざ腰を上げるのも面倒だ。 電車は山裾の郊外風景の中をのんびりと進んで行く。 駅毎に乗り込む客が増えて来たが、相変わらず係員はその一人一人へのお知らせに奔走しているし、お尻の下の椅子も相変わらず冷たい。 信貴山下駅を過ぎて左にカーブを切ると、右側からJR関西本線の架線柱が見えて来て王寺の駅に到着だ。 乗車25分、終点らしく頭端式1面2線のホーム。 前方の改札を抜ければ屋根続きの右手すぐがJR王寺駅改札で、ほとんどの客がそちらへと乗り換えて行った。

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王寺駅
左手がJR、右手が近鉄の改札口

近鉄田原本線

さて次は田原本線、間違いやすそうだが本線ではなく田原本・線である。 同じ近鉄で同じ駅前なのにこちらは「新王寺」という異なる駅名になっているのが不思議だ。 案内板も気づかなかったが、生駒線の王寺駅を出てそのまま前方へと歩いて行くと、ペデストリアンデッキへ上がる大きな階段の裏手に小ぢんまりした駅舎を見つけた。 もう数百メートル線路を延長すれば生駒線と繋がるのに、ここで中途半端に終わっている理由が分からない。 もっとも、両線を直通する需要がそれほどないだろう事は想像に難くない。 待っていた電車はこれまでと変わらない近鉄の通勤型、だが編成は3両とかなり短くなり、今日は乗るほどにローカル色が濃くなって来ている気がする。

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新王寺駅
ペデストリアンデッキ脇にある簡素な駅舎

ワンマンの電車は時間になると静かに動き出す。 線路規格が低いのか、発車してすぐJR線を乗り越す鉄橋の前後は築堤の上を最徐行のスピードでノロノロと走るのが印象的であった。 線路は単線だが、先頭の運転室脇から見ていると複線分の敷地を確保している区間も所々見かけた。 箸尾駅では列車交換の為に長時間停車、暖房は効いているものの、ドアが開け放し状態で足元からジワジワと冷える。 沿線は特に風光明媚な個所もなく、住宅地や田園地帯の中を抜けてゆく。 終点が近づくと、次の線へ乗り継ぐと思しき客が増えてくるのは生駒線と同様だ。 全線所要22分でこれも生駒線に似ている。 まもなく終着の「西田原本」駅、乗り換え客は駅前広場を挟んで向かいにある近鉄橿原線の「田原本」駅へと急ぐ。 駅手前に連絡線はあるようだが、同じ近鉄同士で駅が離れているという不思議を又してもここで体験した。

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西田原本駅
向こう側は旧大和鉄道時代のホーム跡
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田原本駅
乗り換えで西田原本駅から田原本駅へ

photo近鉄路線図