京成電車で行こう(番外編:菅野)
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菅野2丁目付近

工事現場を離れて、少し住宅地の中を歩いてみた。 千葉の鎌倉とも例えられるこの付近だが、確かにそんな空気も感じられる。 歴史を重ねた古いお屋敷もあり、新しい近代的な豪邸もありだが、共通しているのはどのお宅も敷地が広く、立派な門構えをしているという事である。

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白幡天神社

そんな住宅地の路地をしばらく辿って行くと、付近の氏神様として祀られている白幡天神社の前へ出る。 白幡の由来は、源頼朝が安房国に旗揚げした際に、ここ菅野の地に白旗を揚げた事より名付けられたとされている。

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文学碑

神社の境内には、この地に縁の有る永井荷風と幸田露伴の文学碑が建立されている。 荷風の作品「断腸亭日乗」には、白幡天神社のあたりを散策して近くの茶屋で牛乳を飲んだとの記述があり、碑にはその一文が引用されている。

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松並木

白幡天神社から細い路地を繋げて駅前へと戻る。 その道中も邸宅が多数、そして多くの松の木が家々の間から天に向かって伸びあがっている。 こういう光景を見ると海岸地帯を連想するが、かつてこの近辺は真間の入江と呼ばれる湾で、砂州の上の松並木が美しい風光明媚な場所だったそうだ。

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駅前の商店

駅前へと戻って来ると、踏切のすぐ手前に古びた建物の商店があった。 松並木に、この年月を経て枯れた木造の建物はとても良く似合う。 赤い自販機も良きアクセントとなっていて絵になる風景だ。 きっと荷風もこの前を歩いて行った事だろう。

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南口駅前商店

京成線の踏切を渡り南側へ行ってみる。 こちらの駅前広場には、カーブした道に沿って扇形に繋がった長屋造りの商店が建っている。 こういう建物を見ると模型にしてみたくなるが、営業していないのか大半の店はシャッターが降りていた。

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駅南側の工事現場

少し歩いて行くと、フェンスが切れて現場を見下ろせる場所があった。 外環道のこの区間では電車の運行に支障しないよう、ルーフアンドカルバートという工法が使われている。 予め作っておいた箱型構造体を駅下に横から送り込むというやり方で、菅野駅下で施行されたそれは世界最大級なのだそうだ。

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ひかり模型

そして最後に覗いてみた「ひかり模型」。 実は少年の頃に菅野で降りたのはこの店目当てだったが、雰囲気に飲まれてウィンドウから中を覗いただけになってしまった。 昔は模型誌の広告でもお馴染みでオリジナルのキットやパーツも製作していたが、それもその筈、かの「鉄道模型社」から独立したメーカーの1つなのだ。 店主が亡くなりその後息子さんが時々店を開けていたそうだが、この佇まいだと今はもう営業していないのだろうか。

外環道の千葉区間は今年度内の開通を目指すという。 思えば私が市川市内の高校に通っていた頃から工事の計画はあり、当時授業の一環としてこの問題を学習した記憶もある。 その道路計画に関しては賛否両論あるだろうが、あれから40年以上を経て今その計画が実現しようとしているのを見ると、まことに感慨深いものがある。

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