2012年7月に開館した原鉄道模型博物館、コクヨの元役員で鉄道模型製作・収集家としてもつとに有名な原 信太郎(はら のぶたろう)氏の制作した車両やコレクションを展示し、巨大な一番ゲージレイアウトでそれらの走行する姿を拝む事が出来る。 横浜駅至近というロケーションの良さもあり開館以来人気を集めているが、私も念願かなって先日ようやく訪問する事が出来た。 館内での撮影も2013年から全面的に解禁された(但しフラッシュ禁止)ので、撮って来た写真の中から内部の様子を少しご紹介したい。

photo横浜三井ビルディング

博物館のある横浜三井ビルディング入口。 こちらは、みなとみらい線新高島駅側の入口だが、玄関前には汽車のシルエットをかたどったオブジェが並んでいる。 一番手前は新幹線のように見えるが、原氏のコレクションにもあるドイツのプロペラ列車「シーネンツェッペリン」かも。

photo一号機関車

入館して最初に目に入って来るこの機関車は、信太郎氏が小学6年生の時に初めて作った鉄道模型。 車体は家の屋根を修理した際の余り板というからトタンだろうか。 ナンバープレート等、一部に市販のパーツも利用しているが、大きなパンタグラフは針金からの自作品だという。

photo或る列車

その筋の間で「或る列車」と呼ばれるこの車両は、明治時代末期に九州鉄道が米国J.G.ブリル社に発注した5両編成の豪華な客車だ。 だが、その完成時に九州鉄道は既に国有化されてしまっていた為、充分に活用される事なく放置され戦後に廃車となった。

photo或る列車

これらの客車には3軸イコライザー式ボギー台車が使われ、また窓上部にはステンドグラスが装備されるなど、豪華な仕様になっていた。 信太郎氏は幼少期に田町の操車場にこの客車が放置されているのを丹念にスケッチ記録しており、それが模型化の際に役立った。

photo阪神電気鉄道311形

311形は、阪神が連結運転を行なう為に製造した統括制御方式の電車である。 高速電車として国内初のシングルルーフや、複架線集電に対応したダブルポールや単架線用のビューゲル等、この電車の特徴をとらえて模型化されている。

photo信太郎氏所蔵模型の展示

第二展示室には、信太郎氏が収集所蔵した数々の貴重な鉄道模型を壁面に展示している。 また正面スクリーンには、自宅にあるシャングリ・ラ博物館について、自身がそのスピリッツを語る様子が映写される。

photoパイオニア・ゼファー

世界初のステンレス製流線型ディーゼル列車、そのボディデザインは流線型ブームの先駆けとなった。 実車の製造を請け負った米バッド社はステンレス鋼をスポット溶接する技術を開発し、この車両にも使われている。 東急の初期ステンレス車はバッド社の技術を基として作られた。

photoイタリア国鉄 E333形

1900年代初期に電化されたイタリアの鉄道は当初三相交流電化、このE333形もその頃の姿を再現したものだ。 しかし、架線2本と集電装置を2組装備しなければならず、また速度制御も難しいことから、その後普及する事なく徐々に直流3000Vへと切り替えられていった。

photoヴィンテージ・コレクション

第三展示室は「ヴィンテージ・コレクション」と称し、原氏が自ら並んで手にした一番切符の数々や各国の列車乗車記が展示されている。 それどころか氏は、各地で特別な許可の元、実車の運転もこなしているというから驚きだ。

photoスイス国鉄RAe TEE II形

スイス国鉄の開発したTEE用の特急電車RAe TEE II形、シザルパンやゴッタルド等に使用された。 各国の規格が異なる電化路線を走破するため、直流1500V、3000V、交流15KV、25KVに対応する電気機器を搭載している。 TEE色の塗装と流線型の正面は、どこか既視感が…

photoヴッパータール空中鉄道

メルクリン社が20世紀初頭に製造した模型、ドイツのヴッパータールに存在する懸垂式モノレール。 世界最古と言われるこのモノレールは、ランゲン式という鋼鉄製の両フランジ車輪でレールを挟む構造となっており、この模型もそれを再現した走り装置を持っているのが興味深い。

photoドイツ国鉄 103形

1965年より西ドイツにおいて順次投入された、時速200km対応の高速電気機関車。 タマゴのように丸味を帯びた流線型ボディや客車と合わせたTEEの塗装が美しい。 原氏はこの機関車の運転台に座り、実際に客の乗った17両編成の特急列車を運転した。

photoテツモパークへ続くパサージュ

パサージュとは、ガラス製アーケードでカバーされた歩行者用通路との事だが、ここの通路両サイドには収集されたHOゲージの車両が多数陳列されている。 また実車のナンバープレートやコントローラー等の貴重な展示物も。

photoパサージュの展示

ドイツのプロペラ列車シーネンツェッペリンの隣に、国鉄のディーゼル機関車DF50が並ぶという対照的な配置。 上段にあるのは、20世紀特急でも運用されたニューヨークセントラル鉄道のハドソン機 J-3aか? その流線型正面の造作は南海特急ラピートを連想させる。

photoフランス国鉄X2700型気動車

SNCFのTEE用気動車X2700型は「流線型特急電車を造る」でも触れたが、この先頭部デザインは 1955年に第2グループとして登場した X2720以降の後期型との事。 小田急SE(1957年)やSSE車(1968年)にも影響を与えているように思えるが、時期的にはどうなんだろう?