マチレス パスハンター

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作ったのが1988年だから、もうかれこれ 26年も乗り続けている事になる私の相棒。 かつて保有した自転車の中でも一番の長い付き合いである。 これを作った当時は MTBブーム全盛の頃で私も山に入る事に興味があった。 だが、あまり機動性に物を言わせてドカドカと走りたくはなかったので、旧来より日本でランドナーの一派生系として根付いていたパスハンターをオーダーした次第である。 そのきっかけとしてはその頃購読していた「ニューサイ」の影響は否めないだろうが、ある時、ロードで走りに行った顔振峠で出会った一人のサイクリストの事がふと脳裏に浮かぶのである。

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ローローでもなお重いギア比で峠道をヨタヨタ登っていると、後ろから追い付いて来た彼は「こんにちはー」と笑顔の挨拶も爽やかに、クルクルとクランクを軽やかに回しながら走り去って行ったのだ。 そのクランク軸に固定されているフロントギアのインナーがやけに小さいので印象に残った。 思い返してみれば、これがパスハンターという自転車を私が見た初めての経験だった。 息を荒げながら峠に着くと休憩をしていた彼に「お茶でもどうですか」と声をかけられ、コッヘルでいれた熱い紅茶をご馳走してもらったのに痛く感動した記憶がある。 その出会いが、パスハンを作る一つのきっかけとなった様に思うのだ。

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初めてのフルオーダーで作ったフレームはショップブランド「マチレス」(Match Less)のスローピング、これはもちろん山道での足つきを良くする為だ。 元来スローピングはフォルム的にあまり好みではないが、走りの性質上ここは目をつむった。 スロープ角を最小限に抑えてあるので、見方によってはほぼホリゾンタルにもみえる。

色味はフレームの下地全体にメッキをかけてその上から紫の塗装を施す事により、ブリリアントパープルとした。 紫は高貴な人の着る服というイメージが私にはあるが、好きなカラーである。 ちなみに、クイックの着脱をするエンド面とチェーンの当たるチェーンステイ部分は、塗装を抜いてメッキの磨き出しとしている。

変速はサンプレックスの普及版、ペダルやブレーキ系は MTB用の Deore-XTを使用。 チェンリングは定番のTAシクロツーリスト、インナーは勿論 26Tだ。 これにスギノプロダイのクランクを付けた。 そして当時流行っていたアナトミックサドルは、私のお尻に良く合っている。 一応ランドナーのはしくれという事で当初は泥除けを付けていたが、輪行に面倒なのと自分の走りが雨に会う可能性が極めて低いパターンな為、程なくして外してしまった。

スーチャンのリムに 650Bの太いタイヤは、MTBにはかなわないものの飛躍的に走りのフィールドを拡大してくれ、近所の低山から奥多摩、秩父界隈、上州や信州の歴史ある渋い峠道を走り回った。 とにかく私にとって常に一番身近な存在であった自転車で、これで乗鞍や八ヶ岳の夏沢峠も越えたし、近所の床屋に行く時の足も務めてくれる。 つまりは私にとって山靴でもあるし下駄でもあるのだ。

ずいぶんと長く乗って来たがその間に大きな故障もなく、まことに良く走ってくれた。 パーツの消耗は基本的に日常のメンテナンスで済んでいるが、唯一、部品交換となったのはサンプレのフロントディレイラー。 でもこの時は近場の廃線ポタリングの最中だったので助かった。

数多くこなした輪行や山行によってフレームは傷だらけだが、その分惜しげもなく扱えるので気が楽な自転車でもあり、新車を作った後も未だに一番跨る機会の多い、気が置けないヤツである。 年とともに段々車重を感じるようになって来たのでそろそろ次世代の軽量パスハンでも…とも考えているが、まだしばらくはコイツに乗り続ける事になるのかも知れない。

photo ガード付きの頃の写真
フレームMatch Less, 480mmラグ付き(前上り), エンド面メッキ仕上げ, カンティ・レバー・ボトル台座直付け, 色 ブリリアントパープル
ホイール650B, リム スーパーチャンピオン, 600EX SFQR(リア13~24T:6段), プレーンスポーク
ハンドル日東オールラウンダータイプ, 吉貝フラットレバー
サドルセライタリア アナトミックM, サカエ シートポスト, サンツアー QRシートピン
ブレーキデオーレXT カンチ
クランク,チェンリングTAシクロツーリスト(44X26T), スギノ プロダイナミック
ペダルデオーレXT, MKSプラトゥクリップ&ストラップ
チェーンセディスポーツ
ディレィラーサンプレックスLJ4000CP/CT, レバー:サンプレックス
マッドガード本所
フレームポンプSKS(特別加工品)
電装サンツアー スコープライト(ブレーキ台座付け)