北浦から鹿島灘 (1994/06)
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 行こうと思って買ったはいいが、そのまま行きそびれてしまった地図が何枚かある。その中の一つである北浦から鹿島灘方面へ、梅雨入り前ぎりぎりのタイミングで出かけて来た。
 そもそも去年の春に計画を立てていたのだが、時刻表を見るうちにその乗り換えの多さと、都心を輪行袋を抱えて横断しなければならない事に嫌気がさし、実行せずにいた。今回も状況に変わりはないが、早朝ならまだいいかと気持ちを奮い立たせて家を出る。


 青梅,中央,総武,成田,鹿島線と乗り継いで、鹿島神宮駅に10時頃に着いた。駅前で荷をほどき、食料を調達して走り出す。鹿島線の高架をくぐると、道は造成地の雛壇の中をだらだらと登り出す。
 空は雲で覆われてはいるものの、その中から鈍く陽が射して背中が焼ける。やっとの事で丘を登り詰めた後、一気に下って北浦の湖畔に出る。


 しまったと思った。地図で見ると立派な二本線の道が土手上を走っていたので、ついロードレーサーで出かけて来たが、そこには砂利道が続いていたのだ。
 あきらめてそろそろと走る。とはいえ、このレーサーは昔はもっぱらツーリングに使用していた車で、舗装前の保福寺峠や十石峠だってこれで越えたのである。今思うと、かなり無茶な走り方をしていた気もするが。


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 北浦は、隣の霞ヶ浦に比べるとマイナーな存在で、写真等も見たことがなかったが、実際は思っていたよりも明るいイメージだ。特に何があるというわけではないが、釣り人がたくさん来ており、にぎわっている。
 そのうちに、前方の湖面に地図にはない巨大な橋が見えてきた。まだ工事中だったが、現場を通過する時に見ると予想通りの名前、「北浦大橋」と掲示されていた。


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 その先は、土手から下りて田んぼの中の農道(こちらは舗装)を飛ばしたり、疲れると又土手に戻ってたらたらと走る、といった繰り返しとなった。美しい変わった橋脚の鹿行大橋を過ぎたあたりで国道に出て、鉾田を目指す。
 右手の丘を切り通しで抜けてきた鹿島臨海鉄道の線路が、国道をオーバークロスして北浦のほうへとなだらかに下ってゆく。元々、旧国鉄が鹿島線の延長として計画した路線だけあり、実にしっかりした路盤で、どこまでもまっすぐだ。その上を単行の気動車が、エンジン音もかろやかに水戸へ向かって走り去っていった。

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